ロックスター
- Tomoya Abe
- 7月16日
- 読了時間: 2分

子どものころ、世界はもっと単純だった。
退屈な大人は敵で、歪んだギターは正義。
意味なんて分からなくても爆音だけは、嘘をつかなかった。
イヤホンの奥で鳴る革命をランドセルに隠して、誰にも見つからないように少年は何度も拳を握った。
やがて僕らはスーツの着方を覚え、愛想笑いを覚え、納期と家賃と世間体に正しい頭の下げ方まで覚えた。
夢は職業欄に収まらず、情熱は評価シートからはみ出した。
それでも——
理不尽に「はい」と言わなかった夜。
笑われても好きな服を選んだ朝。
誰かの普通より、自分の違和感を信じた瞬間。
そのたび胸の奥であの日のギターが鳴っている。
ステージに立てなくてもいい。 何万人を熱狂させなくてもいい。 六畳一間の暗闇で、満員電車の隅で、誰にも見えない戦場で、
自分を裏切らずに生きる者はみんなロックスターだ。
傷は勲章なんて綺麗事を言うつもりはない。
痛いものは痛いし、負けた夜にはちゃんと泣けばいい。
ただ、明日のイントロが鳴ったならもう一度、立ち上がれ。
かつて爆音に救われた少年たちよ。
大人になった今度はその生き方で、世界を掻き鳴らせ。
拍手がなくても、スポットライトがなくても、心臓がまだビートを刻むかぎり僕らのライブは終わらない。
これは青春を卒業できなかったすべての現代人へ贈るファンファーレ。
ボリュームを上げろ。
常識を少しだけ歪ませろ。
今日というステージの真ん中で、何度でも叫べ。
——俺はまだ、俺のロックスターだ。



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